令和4年3月17日

企業会計基準委員会

実務対応報告第40 号
LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い

2020 年実務対応報告
FSB は、2014 年7 月に、「主要な金利指標の改革(Reforming Major Interest RateBenchmarks)」と題する報告書を公表し、次の点について提言を行った。
(1) LIBOR、欧州銀行間取引金利(EURIBOR)、全銀協TIBOR(TIBOR)といった既存の金利指標である銀行間金利(IBORs)の信頼性と頑健性の向上、及び銀行の信用リスク等を反映しないリスク・フリー・レートの特定
(2) それぞれの金利指標を、金融商品や取引の性質を踏まえて利用していくことが望ましい旨
FSB の提言に基づき、各通貨でIBORs の改廃やリスク・フリー・レートの開発といった金利指標改革が進められている。そうした中で、LIBOR の公表が2021 年12 月末をもって恒久的に停止され、後継の金利指標への置換を余儀なくされることが見込まれている。そこでは、デリバティブ取引と、貸付金、借入金、債券といったデリバティブ取引以外の金融商品とで異なる金利指標に置き換えられる可能性もある。LIBOR は5 つの主要な通貨について公表されており、LIBOR を参照する取引は広範に行われているため、金利指標改革により多くの取引に影響が生じる可能性が高い。
金利指標改革に起因するLIBOR の置換は、企業自身の意思決定に基づくものではなく、企業からみると不可避的に生じる事象である。このような不可避的に生じる事象に対して、そうした事態を想定して開発されていない会計基準を当てはめた場合、当該会計基準の開発時には想定されていなかった結果が生じる可能性がある。こうした会計処理に基づく財務情報が提供されることは、財務諸表作成者が行った取引の実態を適切に表さず、結果として、財務諸表利用者に対する有用な財務情報の提供につながらない可能性があると考えられる。
特にヘッジ会計の適用については、金利指標改革の影響のみに起因して、現行の金融商品会計基準等の定めに従い、その適用を中止又は終了し、損益を認識することに対する懸念が多く聞かれたため、適切な適用範囲を定めたうえでヘッジ会計の適用に関する特例的な取扱いを定めることが必要であると考えられ、2020 年実務対応報告が公表された。なお、本実務対応報告は、公表時点において公表停止が見込まれているLIBOR を対象としているが、今後、LIBOR 以外の金利指標でも、金利指標改革に伴い公表停止が見込まれる場合には、当該金利指標を参照している金融商品の取扱いについても、本実務対応報告を参考にすることが考えられる。

2022 年改正実務対応報告
2020 年実務対応報告の公表時には、金利指標の選択に関する実務や企業のヘッジ行動について不確実な点が多いため、公表から約1 年後に、金利指標置換後の取扱いについて再度確認する予定であるとしていた。
2021 年3 月に、英国金融行為規制機構(英国FCA)は、LIBOR の運営機関であるICEBenchmark Administration が2020 年11 月に公表した市中協議における提案に基づき、LIBOR の公表停止時期を確定するアナウンスメントを正式に行った。その中で、米ドル建LIBOR の翌日物、1 か月物、3 か月物、6 か月物及び12 か月物については、2021 年12 月末ではなく、2023 年6 月末をもって公表停止されることとされた。また、2021 年9 月に、英国FCA は、代替金利指標への移行が真に困難な既存契約(タフレガシー)へのセーフティネットとして、従来の日本円建LIBOR 及び英国ポンド建LIBOR の一部のターム物について、市場データを用いて算出する疑似的なLIBOR(シンセティックLIBOR)を構築するための権限を行使することを公表した。当委員会では、これらの状況及び2020 年実務対応報告の公表以後に当委員会に寄せられた意見を受けて、金利指標置換後の取扱いの再確認について2021 年10 月より審議を開始し、2021 年12 月に実務対応報告公開草案第62 号(実務対応報告第40 号の改正案)「LIBOR を参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」(以下「2021 年公開草案」という。)を公表して広く意見を求めた。2022 年改正実務対応報告は、2021 年公開草案に寄せられた意見を踏まえて検討をしたうえで公表するに至ったものである。

 詳細は、企業会計基準委員会ホームページをご覧ください。)